全国の産地から届く新鮮で美味しい魚を扱う卸売業を市場で営んでいる中部水産株式会社。「魚をもっともっと食べてもらいたい!」という想いを実現させるためのプロジェクトを始動。絵本「おとのさま、おさかなっておいしいの?」から魚食を盛り上げ、未来の魚好きな子どもたちの育成をめざします。
中部水産はどんな会社ですか?
昭和21年に名古屋市中村区で創業し、今年80周年を迎えます。昭和23年に名古屋市中央卸売市場が開設されると、ここで飼料や魚粉の製造販売をスタートしました。昭和26年に本社を市場内に移転し、現在は生鮮・塩干・冷凍・加工食品などの水産卸売業並びに冷蔵倉庫事業を主な事業として展開しています。名古屋市中央卸売市場本場には現在3つの荷受があり、中部水産はその中の一つです。市場では、荷受と言われる卸売会社が産地から市場に集まった水産物などを受け取って競りを行い、仲買と言われる仲卸会社に販売します。その後、仲卸から小売業者などに販売されるのが魚の主な流通ルートとなっています。
市場がある熱田区は、昔から漁港としても栄えていたそうですね。
はい。東海道五十三次で41番目の宮宿は熱田神宮の門前町で、東海道最大の宿場町として栄えていました。東海道唯一の海上路である「七里の渡し」の船着場があり、船待ちの旅人や大名で賑わっていたそうです。これより南には海が広がっていたわけですから、漁港としても栄えていました。海辺に小屋を作って漁師がとった魚を持ち寄り商人が集まって取引を行っていた場が、魚市場に発展したと考えられています。市場には戦国の覇者・信長公も訪れたと言われていますが、おとのさまにとっても魅力的な場所だったことが伺えます。
絵本プロジェクトのきっかけは何ですか?
家庭の食卓での魚離れを何とかしたいというのが最初にあります。国民1人当たりの魚介類消費量は、2001年度のピークから下降し始め、2011年度に肉類に逆転されると、2023年度にはピーク時のほぼ半分まで下がり、日本人の魚離れは顕著です。魚は身体に良いとされながらも、主菜では肉の割合が増えています。魚離れの要因は、肉類に比べて調理に手間がかかるというイメージや、小骨が喉にひっかかった経験から魚を苦手とする傾向があります。そうした状況を避けようとする親側の事情も、魚料理が食卓に並ばなくなってきた背景にあると考えられるでしょう。そこでまずは子どもたちの苦手意識からなくし、魚に興味を持って、「魚を食べたい」と思ってもらえる流れを作りたいと考えました。子どもたちに伝えるには、やはり絵本が分かりやすいと思いました。また、芸術大学出身の社員がいたことで、このプロジェクトは早く大きく動き出しました。
絵本を描いた女性競り人について教えてください。
絵本を描いた石川菜々子さんは、芸術大学出身でありながら、名古屋市場の魚売り場で唯一の女性競り人になりました。「市場は小さい頃から馴染みのある場所で、近所のお祭りでは名古屋市中央卸売市場本場にある大きな冷蔵庫を見学させてもらった記憶もあります。一方で、絵を描くことと食べることが好きだったので、小学生の時には食レポのような4コマまんがをよく描いていました。そのまま芸術大学に進み、就職にあたって自分のバックグラウンドを見つめ直そうといろいろなアルバイトをしたのですが、その中の一つが子どもの頃から親しみのある市場でのマグロに携わる仕事でした。この時に感じた現場のキラキラ感、あいさつの気持ち良さ、「ありがとう」と言われた時の嬉しさが忘れられず、どこよりもワクワクしたここで働きたいと思いました。
サバ売り場の競り人になって2年目ですが、競り台に上がると今もドキドキします。仲卸に向けて瞬時に価値を決めていかなければならないので緊張感と共に気合も入ります。産地から出荷された水産物を丁寧に売ることを心がける中で、産地や仲卸とのコミュニケーションや信頼関係がとても大切だと感じています。競りが終わった午後には比較的時間に余裕ができるので、社内には釣り、バンドやスポーツなどの趣味を楽しんでいる人が多いですね。個性も豊かで創造的な会社です。私にとってはこの絵本プロジェクトが個性を活かせる機会となりました。自分が生み出したキャラクターをどう動かしたら子どもたちに興味を持ってもらえるかを考えたり、大好きな魚をたくさん描けることが嬉しくて、絵本を制作している私自身が楽しませてもらいました。魚は奥が深いです。一匹一匹が全く違うし、見ても、食べても、釣っても、飼っても、多方面に楽しみがある。色がキレイとか可愛いとかでもいいので、魚に関心を持ってもらいたいと思っています。」
絵本の内容はどんな話ですか?
お母さんと買い物に来た魚嫌いの子ども(みなと)が、名古屋市中央卸売市場本場の2階に掲げられている絵を見ているうちに、その絵の中に吸い込まれタイムトラベルするところから物語は始まります。舞台は当時の魚市場。そこにお殿様がやってきて、いつものようにたくさんの魚を買って、市場は大賑わい。魚が苦手だと言うみなとをお城に招いて、地元で獲れる魚を使って、どのように調理され、どのように食べられてきたのかを教えてくれました。鯛や鰯、フナにタコ、蛤など、あちこちからいい匂いがしてきて、みなとは魚を食べたくなってきます。実際に食べてみると、自分が思っていたよりもずっと美味しいことに気が付きます。そして絵の中から戻ってきたみなとは、魚への苦手意識がなくなり、魚を食べたいと思うようになったというお話です。子どもたちに魚を食べることへの興味を抱かせるようなストーリーになっています。
絵本は今後、どのような場所で読まれるのですか?
愛知県・名古屋市の保育園、小学校、図書館などに配布することを考えています。すでに名古屋市内に約300校ある小学校・幼稚園・保育園への配本を予定しているので、学校の中からも魚食普及が進んでいくことを期待しています。また、親子で手にとってもらえる場所に置いてもらえるよう働きかけていく予定です。毎日のご飯を作ってくれる親と一緒にこの絵本を読んでもらうことで、魚の話を共有したり、一緒に考えるきっかけになればと思っています。そして、「お魚を食べたいな」「今日はお魚にしようか」と、食卓に魚料理が増えていくと嬉しいです。
絵本は今後、どのような場所で読まれるのですか?
愛知県・名古屋市の保育園、小学校、図書館などに配布することを考えています。すでに名古屋市内に約300校ある小学校・幼稚園・保育園への配本を予定しているので、学校の中からも魚食普及が進んでいくことを期待しています。また、親子で手にとってもらえる場所に置いてもらえるよう働きかけていく予定です。毎日のご飯を作ってくれる親と一緒にこの絵本を読んでもらうことで、魚の話を共有したり、一緒に考えるきっかけになればと思っています。そして、「お魚を食べたいな」「今日はお魚にしようか」と、食卓に魚料理が増えていくと嬉しいです。プロジェクトで次の展開はありますか?
絵本に出てくるキャラクターを使って、ご当地弁当や駅弁、地元の飲食店等とのコラボレーションを行い、魚食普及に貢献していきたいです。

